教育についての思い

これからの教育

幼児期の学びは、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な役割を担っています。幼児教育の大きな特徴は、子ども達がやりたくなるような豊かな環境がとても重要です。園生活の中で出会う様々なものや、人、出来事などといった直接的、具体的な体験を重ねていく中で、好奇心や探求心、挑戦しようとする力や、人とかかわる力など、さまざまな力を自ら獲得していきます。

これらの力は、子どもを「教える対象としてみる」ことだけでは獲得できません。子どもは未熟で、「教えて、変えて、一人前の人間にする」という考え方は、「子ども」をつねに外界から操作し、変化すべき対象だということです。たとえ幼児であっても、いや、幼児であるからこそ、子ども自身が自らどのようにありたいか、どのように生きたいかという、言葉にはならないかもしれない子ども自身の思いや考えを受け止めて保育する必要があるのです。

このような幼児教育の基本的な考え方は、国が定めた幼稚園教育要領や幼保連携型認定こども園教育・保育要領でもはっきりと示されました。また、横浜市が2020年3月に策定した「よこはま☆保育・教育宣言―乳幼児の心もちを大切に―」でも、横浜市内の1000を超える多様な保育・教育施設が良質な保育を実現させるための指針として、基本的な考え方として明記されています。
「よこはま☆保育・教育宣言―乳幼児の心もちを大切に―」については、港北幼稚園、ゆうゆうのもり幼保園の保育を理解してもらう意味も込めて、この冊子に掲載しました。今後、横浜市内の全ての保育者・園のみならず、家庭や地域の関係者、小学校にも周知・広報されていく予定です。

港北幼稚園、ゆうゆうのもり幼保園の保育は、子どもの遊びを大事にしているため、その成果を外部の人にわかりやすくお見せすることは難しく思えます。何かを教えて、それが「できる、できない」という価値観で子どもをみるわけではなく、一人ひとりの子どもの気持ちを大事に、自らが考え、できなくても挑戦しようとしたり、何か問題が起こっても、粘り強く取り組んだり、みんなと話し合って乗り越えていくような力を育てようとしているからです。

さらに、このような幼児期に養われた力は、平成30年に改訂された小学校以上の学習指導要領でも、アクティブ・ラーニングという言葉に象徴されるように、これからの教育に最も求められている力でもあります。言われたことしかできない、教師の指示がなければ動けないのではなく、自らが問いを持ち、その答えを教わるのではなく、追求し続けようとする力こそが学ぶ力です。この力の獲得がいまや全世界の課題になってきているといっても過言ではありません。
この資料を通して、どんな力を幼児期に育てるべきか、どんな保育が大切なのかを、いま一度、考えていただけたら幸いです。

大豆生田先生との対談

港北幼稚園
理事 大豆生田啓友

あそび中心の保育の中で育まれるもの

渡辺園長:港北幼稚園、ゆうゆうのもり幼保園では遊び中心の保育を展開しています。小学校入学前から先取り教育をしたほうが良いのでは?と感じている保護者の方も多いと思うのですが、大豆生田先生はどう思いますか。

大豆生田先生:「先取りで勉強をしたら入学後も困らないのでは?」とか、「遊びだったら家庭でもできるし園でやる必要はあるの?」と保護者の方は疑問に思うかもしれませんね。しかし、園での遊びは家庭で行う遊びとは質が違います。
幼稚園や保育園では好きなように子どもを遊ばせているわけではなく、保育者が立てたねらいや仕掛けに基づいて遊びが展開されます。そして、一緒に遊ぶお友達からもたくさんの刺激を受けます。そういった環境の中で子どもたちは多様な経験をするのです。
夢中になって遊び込む経験は乳幼児期の子どもにとって大事なもの。子ども主体の遊びを通した学びが極めて重要であるということは、世界的な研究でも明らかになっているんですよ。

 

先生たちの毎日の振り返りが保育の質を高めていく

渡辺園長:子どもたちが夢中で遊び込んでいる姿や、私たちが保育の質を高めるために取り組んでいる内容について、ぜひ保護者の方にも知っていただきたいと思っています。

大豆生田先生:こちらの園では先生たちが日々の子どもたちの様子を「ドキュメンテーション」にして発信していますよね。写真と一緒に、この子はこんな遊びで盛り上がっていましたとか、〇〇ちゃんと一緒にこんなことに興味を持っていましたとか。
「先生たちって子どもたちが帰った後は何をしているんだろう?」と疑問に思っている方もいるかもしれませんが、実は先生同士で語り合って一人ひとりの子どもの姿をよく振り返った上で明日の計画を立てているんですよね。この振り返りこそが、保育の質を高めるポイントだと思います。

子どもたちの能力を育む仕掛けは
ごく普通の遊びの中に

渡辺園長:今、非認知能力という言葉が注目されていますが、そちらに関してはどう思いますか?

大豆生田先生:非認知能力というと、心や社会性を育むという部分に焦点が当てられがちですが、実は保育では目に見える認知的なこともしっかり育んでいるんですよね。たとえば、遊びの中で数を数えて数量に関する経験を深めたり、化学的な経験や運動的な経験だって盛り込まれています。運動の能力を育てるためには体操教室をやる必要があるかというと、実はそうではありません。ごく普通の遊びの中でも運動能力はちゃんと育まれているんです。
子どもたちを集めて一斉に何かをやらせる保育は実はやりやすいのですが、質の高い保育を行なっているプロたちは、一人ひとりがやっていることを見て認知的な能力の育ちまで振り返り、その反省を次の活動に取り込んでいるんです。

これからの幼児教育・保育を語る

渡辺英則 × 大豆生田啓友 スペシャル対談

パート1

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パート5